ピル処方
低用量ピルについて
「ピル」と聞くと「副作用」を心配される方が多いのですが、持病のない健康な女性が内服する限り、ほとんどリスクはありません。ピルを服用した女性の多くが「もっと早くピルを飲み始めれば良かった」と述べられています。クリニックでは服用方法や注意事項の説明後に、その方に合ったピルをご相談のうえ、処方させていただきます。
なお、低用量ピルの処方をご希望される場合では、下記の検査を定期的に必ず受けていただくこととしています。よって、他院で何か検査を受けられた方では、その結果をご持参くだされば除外いたしております。
- 婦人科診察
- 性感染症などの疑いがないか、下腹部などの病気が無いかをチェックします。
性交経験のない方、希望されない方では省略可能です。 - 超音波検査
- 子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣腫瘍などのチェックを行います。
性交経験のない方はお腹から検査しますので大丈夫です。 - 子宮頚がん検査
- 1~2年以内の検査ペースで行っています。
姫路市の無料クーポン券を有効活用しましょう。 - 血液検査
- 必ず1年に1回は、貧血・肝機能異常・脂質異常・血栓症リスクチェックのために行います。
軽度異常値があれば早めに再検しておきましょう。
低用量ピルの種類と特長
- 第1世代(フルウェルLD/ULD)
- 比較的内膜が薄くなりやすいので、出血量が減りやすいが、不正出血が起きやすい。
- 第2世代(アンジュ・ラベルフィーユ)
- 不正出血は起こりにくいが、人によって、むくみ感や乳房痛を伴うことがある。
- 第3世代(マーベロン・ファボワール)
- 不正出血もむくみも比較的起きにくいが、しっかり出血するので月経痛が多少ある。
- 第4世代(ヤーズ・ドロエチ)
- PMDDの方には特に有効。むくみは最も起きにくく、出血量も減りやすいが、不正出血は起こりやすい。血栓症リスクチェックはまめに行っておくことが望ましい。
- 避妊目的での処方は基本的に自費診療ですが、生理痛が強いなどの場合で保険が使えることもあります。
お気軽にご相談なさってください。
低用量ピルの副効能(利点)
- 確率の高い避妊効果
- 服用忘れがない限り、99.8%の避妊効果があります。
- 月経痛が軽くなります
- 80%の女性が感じている月経痛から開放されます。
- 月経の量が減ります
- 貧血の方にとって治療的効果があります。
- 月経の日数が短くなります
- 月経期間は2~4日に短縮します。
- 月経が28日周期になります
- 旅行の計画などが事前に立てやすくなります。
- 月経前の体調不良が改善します
- 特に、イライラや頭痛などの症状がよくなります。
- 肌荒れ・ニキビ・多毛症にも効果があります
- 男性ホルモン産生の抑制効果により。
- 子宮内膜症の予防に
- 引いては不妊症の予防にもつながります。
- がんの予防に
- 子宮体がん・卵巣がん・大腸がんの予防効果が報告されています。
- 月経の日を自分でコントロールできます
- 一相性ピルの場合に限ります。
低用量ピルの副作用(欠点)
ピルの副作用は、不正出血・吐き気・足のむくみ・頭痛などですが、これらはマイナートラブルと呼ばれ、一時的で軽微なものがほとんどです。
重要なのは、血栓症です。血栓症とは血管の中で血液が固まり、血液の流れに栓をしてしまう病態です。ふくらはぎを流れる静脈に発症することが多く、症状としてはふくらはぎや太ももが腫れ、強い痛みを伴います。
しかし発症率は極めて少なく、2020産婦人科ガイドラインによれば、低用量ピルを服用していない女性の静脈血栓症発症のリスクは、年間10,000人あたり1~5人であるのに対し、低用量ピル服用女性では3~9人(参考:妊娠中は5~20人、分娩後は40~65人が発症)と報告されています。このデータからは、実際の低用量ピルによる血栓症の発症頻度は、妊娠時などと比較し、かなり低いことがわかります。
まず、服用禁忌に触れていないかをよく考慮し、安全に服用いただけるよう、定期的な血液凝固検査と血圧測定をお願いしています。
よくある質問
服用を始めてから、不正出血がよくあるのですが
これはまだ分泌されている自分の女性ホルモン(内因性)と、ピルに含まれる女性ホルモン(外因性)のバッティングによることと考えられています。
そのため、ホルモンバランスが安定する2シート目を内服する頃では、不正出血は治まります。
しかし、3シート近く服用を進めても治まらない場合では、種類を変更することで改善させましょう。
服用すると気分が悪くなり、吐き気がするのですが
私に合ってないみたいで、種類を変えたいのですが
低用量ピルを飲み始めてどれくらいで避妊できますか?
飲み忘れすると妊娠しますか?
飲み忘れました。どうしたらいいですか?
「ほぼ1日飲み忘れ」の場合では、前の日の分と合せて同時に2錠を服用してください。妊娠の可能性は高くありませんが、飲み忘れの時期がシート第1週目の時期なら緊急避妊ピル服用を考えてみましょう。
「2日以上飲み忘れ」の場合では、服用を中止して現在のシートを廃棄してください。性交があったのであれば、緊急避妊ピル服用を考えてみましょう。月経がきたら新しいシートを始めましょう。
太りませんか?
よく太るといわれる理由は、「水分貯留作用」と「食欲増進効果」によるものです。
卵胞ホルモン作用の一つに「水分貯留作用」があり、これによって体重が増加したと感じることがあります。
また、黄体ホルモン作用の一つに「食欲増進効果」があり、食べ過ぎてしまっていることが考えられます。
将来妊娠しにくくなりませんか?
むしろ、不妊症の原因となる子宮内膜症を予防してくれるので、望んだ時に早く妊娠するためへと、むしろ有益に働いてくれます。
がんになりませんか?
以前では、乳がんが増える可能性を指摘する意見がありましたが、現在は否定されています。
むしろ、卵巣がん・子宮体がん・大腸がんのリスクを減少させる作用として知られています。
緊急避妊ピル
(アフターピル)
避妊のない性交後の72時間以内で、妊娠を緊急回避したい場合ではアフターピルが有効です。
ピルによって受精卵の子宮内膜への着床を防ぎ、排卵を遅延させるなど、強制的に妊娠を回避します。
- レボノルゲストレル法
- 性交後の72時間以内に、レボノルゲストレル錠を1錠服用します。
妊娠阻止率は、性交後24時間以内の服薬で95%、48時間以内で85%、72時間以内で58%とされていますので、できるだけ早い服薬が望まれます。
下記のプラノバール錠と比較して、吐き気をはじめとした副作用が少ないことが特徴です。 - ヤッぺ法
- 性交後の72時間以内に、プラノバール錠を2錠ずつ2回服用します(1回目は速やかに、2回目はその12時間後)。
妊娠阻止率は、性交後24時間以内の服薬で77%、48時間以内で36%、72時間以内で31%とされていますので、24時間を過ぎた場合では、レボノルゲストレル法の方がよいでしょう。
このように、緊急避妊ピルを正しく服用しても、妊娠を防止できなかったケースがあります。
お薬が効いたかどうかは服用後すぐにはわからないため、予定の月経が1週間以上遅れたり、心配なことがあれば、早め早めでご相談なさってください。
月経日の移動
旅行、温泉、試験、スポーツ大会など、大事なイベントと次回の月経が重なりそうな時では、月経を1週間ほど遅らせることは難しくありません。また、逆に月経を早めることも可能ですが、早めの受診が必要です。
以下が服用の概略ですが、具体的な服用日のご説明を行いますので、お気軽にご相談になってください。
月経を遅らせたい場合
次回の月経と考えられる予想日の5日前からピルを始めて、月経を避けたい日まで継続します。
内服を終えてから2~3日で月経が来ます。
月経を早めたい場合
月経開始5日目頃からピルを始めて、起こしておきたい日の2日前まで継続します。
この場合では10日以上内服しておく必要があります。内服を終えてから2~3日で月経が来ます。