婦人科疾患レーザー治療
CO2レーザー治療とは
CO2レーザーは、切開・凝固・蒸散といった目的をもって、幅広く手術に応用されています。
痛みや出血もほとんどなく、深部組織や周辺の正常な皮膚にはダメージを与えずに治療できるので、メスで切除するよりも傷跡が残りにくいことが特徴です。
子宮頚部異形成への応用
子宮頚部異形成(子宮頚がんの前にある状態)に対し、CO2レーザーを用いて子宮頚部からの深さ3~5mmを重点的に処理する治療のことで、子宮頚がん近くまで進行していないのであれば、レーザー治療で様子をみることが可能です。
メリットとしては、将来で妊娠したときの切迫早産のリスクが少なくなります。また、麻酔が要らない所要時間20分程度の手術なので、日帰り手術です。
デメリットとしては、表面の悪い細胞を吹き飛ばす目的のみのため、術後の摘出物がなく、病理検査による確認ができません。また、簡便な手術である反面、円錐切除よりも再発率は若干高いとされています。
文献的には、中等度異形成までは5~10%、高度異形成では約20%の再発率と報告されていることから、当クリニックでは、中等度異形成までの方を対象として、レーザー治療を行っています。
レーザー手術の実際
- クリニック内で手術予定時間15分前に、痛み止め座薬を肛門内にご自身で挿入いただきます。
- 排尿を済ませたあとに、外来手術室で内診台での姿勢になっていただきます。
十分な消毒後に手術を始めます。少々煙が発生しますが、手術中は排煙装置で軽減させています。タオルが必要でしたらすぐにお渡しいたします。 - CO2レーザーを用い、子宮頚部に対して円板状に熱を加え蒸散します。軽度の熱感を伴いますが、痛み止め座薬のみで問題なく行えています。それでも痛みを感じられたら、すぐに局所麻酔を加えますのでご安心ください。
手術時間はおよそ20分前後です。 - 術後出血を緩和する目的で、ガーゼを腟内に挿入しておきますので、帰宅後に自宅でガーゼを抜去していただかねばなりません。
- 感染予防の抗生物質と消炎鎮痛剤を処方します。
帰宅後の食事やシャワーの使用に制限はなく、就労は翌日から可能ですが、入浴と性交は医師の次回診察後となります。
術後の注意点としては、蒸散された組織が再生を始めて修復されるのに4週間程度かかります。この間では、水っぽいおりものが続き、蒸散部に「かさぶた」が形成され始めます。これらが3週間前後で剥がれ落ちて不正出血することがあります。 - 術後8週間以後で、細胞検査による追跡を再開します。
- 「定期健診で1年以上子宮頚部異形成が続いている」「いつになったら正常になるのか不安」などでお悩みの方はご相談ください。
外陰コンジローマ
コンジローマは子宮頚がんと同じく、HPV感染が原因です。感染後の1~8ヶ月の潜伏期間を経て、形がカリフラワーに似た、ピンク色のイボが形成され気付きます。良性腫瘍ですが再発率が高いことで、精神的に疲れてしまいますが、根気よく治療を行うことが大切です。
なお、外陰コンジローマがある場合は腟の中も調べておくことが必要です。
外陰コンジローマへの応用
当クリニックでは、できるだけ治療期間を短縮し、再発例を少なくするため、塗布剤・CO2レーザー・高周波治療器を併用しての治療を行っています。手術では、局所麻酔テープ使用後にレーザー照射を行います。治療時間は約5~20分です。
術後は普段通りに生活できますが、治療部位は3週間近くジクジクした感じが残ります。照射後しばらくしたらベセルナクリーム塗布を併用します。クリームは目で見えない微細なコンジローマに効くので、再発例が少なくなります。性交再開は4~8週間後が目安です。
バルトリン嚢胞(膿瘍)
バルトリン腺は非常に小さな丸い腺で、腟入口部の両側にあります。また皮下の深い位置のため、通常は触れても分かりません。バルトリン腺は性交時に必要な潤滑液を分泌しますが、バルトリン腺に通じる管が詰まると、粘液が貯留して腫れた嚢胞ができます。全女性の約2%にみられ、その多くは20代に生じています。嚢胞が感染を起こすと膿瘍となり、その原因菌は大腸菌またはブドウ球菌によることが多いようです。
バルトリン嚢胞への応用
痛みを取るだけであれば、2分で終わる穿刺手術が簡便ですが、これを行っても再発した場合や、過去に何度も再発を繰り返している方には、CO2レーザーによるバルトリン嚢胞開窓術を行います。
当クリニックでの手術手順として、嚢胞の表面に局所麻酔をします。次いでCO2レーザーを用いて切開し、器具で切開創を広げながら内容液を排出します。その後、切開創がすぐに閉じないよう、レーザーで皮膚断端を処置して、楕円形の皮膚切除とします。レーザーを用いるため出血は少なくて済みますが、必要な場合では吸収糸で止血縫合することもあります。これら15分程度の手術で、終了後は速やかにお帰りいただくことが可能です。
内容液は細菌培養検査に提出し、抗生剤・消炎鎮痛剤を数日間で服薬して頂きます。切開部の傷が治るまで時間がかかります。術後は状態確認のため、2週間を週に2回ほどの目安で、洗浄通院していただくこととなりますが、遠方の方では配慮いたします。
頚管ポリープへの応用
頚管ポリープは、子宮の入り口にできる茎状の異物です。小さい場合では鉗子で容易に切除できますが、大きい場合では出血を止めながらレーザーで切除しています。また、子宮息肉様の筋腫核切除などにも用いています。
疣(イボ)と黒子(ホクロ)などへの応用
疣と黒子の切除、あるいは外陰部腫瘍摘出なども、切除した傷跡が残りにくいレーザー治療を行っていますが、外陰部周辺に限らせていただいています。気になっている箇所がありましたら、ご相談にいらしてください。